AD|木工家具職人|松岡さん茂樹blog|2017,12,17

オーダー家具|無垢家具|職人の工房【KOMA】

ダイニングチェア|木製椅子|koma.jpg

12月一週.jpg

2017.12.17/ADさん

12月の一週目のある日。

TVの密着番組の打ち合わせに制作会社のスタッフさんが工房に来てくれた。

可愛らしい20代前半の女の子だ。
名刺にはAD(アシスタントディレクター)と書いてある。

普通はディレクターさんのアシスタントとしてついてくるのが読んで字の如くADさんだ。

でも今回はADさん1人だけ。


「えーと、えーと。。何から話せば。。とにかくこういうの始めてなんです。。」となにやら緊張した様子の彼女。

話はこうだ。

以前ウチの武内マイちゃんを中心に取り上げていただいた「7ルール」というTV番組をたまたま観たらしい。
厳しい職人の男社会で奮闘するマイちゃんと、やはり同様である番組制作の現場で働く自分の姿が重なったようだ。

「同じ歳なのに武内さんは活躍しててカッコ良くて、私は下っ端の一番下っ端で、とにかくこのままじゃダメだと思って。。」

そこで彼女は一念発起して自ら番組の企画を創ろうと思ったらしい。

「誰にも求められてないんです。下っ端の私のチャレンジなんて。」

どうせなら自分が影響を受けたKOMAで密着番組を創りたいと考えてくれたらしい。

企画を上司にぶつけてみたら「1人で行ってきてみろ」とチャンスを貰えての今日なのだ。


なんとも嬉しい話である。



そうして打ち合わせが始まった。


「KOMAってなにがスゴいんですか?」と彼女。
聞かれてもどう答えて良いか分からないタイプの質問にとまどいながら

「大量生産と工芸の違いってわかる?」と俺。
「う〜ん。。なんとなく。。」

「職人が手で創った作品を理解してもらうのって難しくて、、えーと、、一般市場の中で認知してもらえてて、、それには評価とか実績とか必要で、、みたいな?」

「すみません。それのどこがスゴいのかわかりません。。」と彼女。

「そうだね。。えーとなんだろうな。。。」

正直で気持ちがいい。
何よりちゃんと自分が理解して上司にKOMAの良さを伝えようとしてくれている熱意が嬉しい。

でも説明するのが難しい。



こんな調子で2時間ほどの質疑応答と製作の実演などをした。

人に理解してもらう難しさをあらためて知って勉強にもなった。



数日して彼女から電話がかかってきた。


「上司にもっとKOMAのこと伝えたくて!だから追加で質問があるんです!」

どうやら彼女の企画書が好評だったようで、一段階上の会議に臨むための追加資料が必要とのこと。

「おー!彼女スゲーよ!!」
なんだか俺たちKOMAメンバーも盛り上がる。


また数日して電話がかかってきた。

しかし、なんだか浮かない声。

「いい番組が創れそうだ!」
上司の評価も上々で次々と段階をクリアしていったそうだ。

社長参加の会議まで漕ぎ着けて「よし!これでいこう!」と決まりかけたところで問題発覚。

以前にKOMAが取り上げていただいた番組と今回のスポンサーがバッティングするという理由で企画は一瞬で白紙になってしまった。

残念だけどチャレンジのほとんどはこんなもんだ。
一度の挑戦ぐらいじゃ環境もきっと変わらない。
ただ自分の内側で何か少し変わるかもしれない。
それが達成感でも敗北感でもそんな事はどっちでもいいのだ。
チャレンジの結果を受け入れた経験の積み重ねが環境を変えていくと思う。


「下っ端の自分のチャレンジなんて誰からも求められていない」
彼女の言葉が印象的だった。
少なくとも彼女の上司はその挑戦が嬉しかったはずだが、でも確かにそのとおりだと思った。

誰だって最初は下っ端で誰からも期待なんてされない
それでも続けていれば少しずつ期待してくれる人が増えてきて、それに応える責任が自由を与えてくれるような気がする。

チャレンジなんてのは、自分が納得できないとか誰かに褒めてもらえたら嬉しいとかそんな理由で勝手にやるもんだ。
なにかのせいにしてストレスを溜めるなんて馬鹿々々しいし、諦めてしまうのはもったいない

居酒屋で上司、会社、政治とどこまでもスケールアップしていくグチで盛り上がるオッチャンも夜の街の風情としては悪くないが、なんかスゲー疲れそうだし出来ればそうはならない方が良さそうだ。




残念そうな彼女だったが、最後にこんなことを言ってくれた。

「松岡さんカッコ良くて!だから私が密着番組を創るからそれまで待ってて下さい!」
マジ嬉しすぎる。
若いお嬢さんにそんなこと言ってもらえるだけで家具職人やっててよかった。


過去が今を創るけど、過去の半分は今が創ると思っている。
苦い思い出の半分くらいは今が良ければ笑い話になるからだ。

「いつかの彼女にガッカリされないように」
それだって十分チャレンジの理由になる。

そして本当に実現したときの打ち上げはたいそう盛り上がるだろう。

そんな未来を想像できる出会いがあるからやっぱり仕事は面白い。



上写真は12月の一週目にしていた仕事の中で一番覚えている事。
tie chair2017の特注品を製作中。
椅子の仕上げに用いる小鉋や小刀などの刃物の使い方がまた少し進歩できたことを半年ぶりに実感できた。
それを武内マイちゃんに教えているところ。